いつかはぜひ行ってほしい個人的おすすめ観光地として、前回の記事では個人的熱海のおすすめスポットをご紹介しました。
熱海と言えば忘れてはいけない、MOA美術館。熱海に来るなら必ず寄りたい! と思う場所の一つです。
こちらの美術館のなにがいいのか。
徹底的に美術品を美しく見せるためのこだわりがパないのです。
先にお伝えすると、私はデザインの仕事をやってはいるのですが、実はアートや美術史にそこまで詳しくはなく、美術品の突っ込んだ解説などはできません 笑。
それでもお伝えしたいことは、美術品をいかに美しく見せるかにフォーカスしたり、「もう建物自体が美術品ですね!」と思うくらい美しい、このMOA美術館の建築の素晴らしさなのです…!!
アート・建築好きにはたまらない場所となっています。もう作品よりも空間の美しさにクラクラするほど1人大興奮でした!
では早速ご紹介。
MOA美術館とは
MOA美術館は、岡田茂吉美術文化財団が運営する熱海市の私立美術館です。
「MOA」とは創立者の岡田茂吉氏のお名前をもじった「Mokichi Okada Association」の略称。
初島や伊豆大島、房総半島から三浦半島、伊豆半島までを見渡せるメインロビーがあり「海の見える美術館」とも呼ばれてます。
黄金の茶室や能楽堂なども有名。岡田氏のコレクションを基盤に、国宝3件、重要文化財67件を所蔵しており、主に日本・中国を中心とした東洋美術の屏風、掛け軸、書跡、陶器・工芸品、彫刻、仏教美術品などのコレクションが多いです。
岡田茂吉さんとは誰
では名前を冠する岡田茂吉さんとはいったい誰なんだ? という話ですが、実は新宗教・世界救世教の教祖です。
美術館のある敷地内には、その宗教関係の施設もあったりするので、「え、宗教…?」みたいに少々抵抗感がある方もいるかもしれませんが…ちょっとそれは脇に置いといて…
私の中で印象に残っている彼の言葉をご紹介したいんです。
「優れた美術品には、人々の魂を浄化し、心に安らぎを与え、幸福に誘う力がある」
「美術品は決して独占すべきものではなく、一人でも多くの人に見せ、娯しませ、人間の品性を向上させる事こそ、文化の発展に大いに寄与する」
"良い"美術品は、ただただ良いと。文化を築いていく大切なものである、共有されるべきと。
個人的にとても共感できる言葉です。
いい作品には純粋に心から惹かれるなにかがあるし、心が動く感動が、そのまま生きるチカラになります。美術品を多くの人にオープンにするという美術館の役割はとても大事。
MOA美術館の建築について
MOA美術館は、2017年2月に11ヶ月の工事休館を経てリニューアルオープン。
リニューアル時の設計は、現代美術作家である杉本博司氏と建築家の榊田倫之氏が主宰する「新素材研究所」が手掛け、「美術品がもっとも美しく映える空間」をコンセプトに進められました。
まずは、見てもらいたいこのムア・スクエアからの景色!
熱海駅からはバスで8番のりばから約7分。鬼の急登坂道を登った高台にあります。
熱海は海のすぐそばから山が始まる地形で、そのおかげで気候は温かいですが、かなり急な坂道が多いです。
ちなみに、はじめて行くとちょっとびっくりするかもしれませんが、バス降り場から実際の美術館へ行くまでの道がまた豪勢です。
エントランスから美術館本館までは高低差約60m。総延長200m、なんと7基のエスカレーターで、その道をつないでいます。
「ん…?」と言いたくなりそうな 笑、静かで不思議な巨大空間のエスカレーターをひたすら登りつつ、まずはムア スクエアへ向います。
そして、見てくださいこの景色…!
写真の左下にヘンリー・ムアさんの「王と王妃」というブロンズ像があります。凛としたたたずまいで二人で海を眺めてます…。ロマンチック…。
MOA美術館の外観も要チェック!
そしてこちらが美術館本館。
肌色の壁面はインド砂岩の壁。美しい模様が浮かび上がってます。
美しい佇まいです…。建築のこと全くわからないけど←、建築見るの大好き人間です。
影も絵になる美しい壁。入り口前がすでに造形美すぎて、つい写真を撮りまくりました…。
【ここがポイント】美しさにこだわった美術館館内
伝統的素材と現代デザインの融合
まず、こちらの建物内側の赤と黒の玄関扉。
エントランスを入って後ろを振り向くと、いきなり赤と黒の大胆なコントラスト。実はこちら、高さ4mもある世界最大級の漆塗りの扉。
漆芸家の人間国宝 室瀬和美氏によるもので、根来塗(ねごろぬり)の意匠「片身替*」をコンセプトに採用したそう。
*かたみがわり…桃山時代にお金の少ない庶民の間で広がった着物の布を半身で変えて仕立てた手法。これが流行して陶器や調度品にも使われ始め意匠となった。
小さな工芸品でしか見たことのなかった漆が巨大な扉に…!
ステンレスの上に漆を施したものですが、かなり難しいとのことです。麻布を貼る昔の技法を取り入れて完成させたそう。
早速、入り口から驚きの美術品が見られるのがこのMOA美術館なんです。
景色も1枚の絵に
漆扉から館内へ入った瞬間に広がる、この玄関ロビーの風景。外の緑や自然が、一枚の絵のように映えます。
美しい展示のタイトルロゴの奥に広がるのは…
絶景の海が広がるパノラマビューのメインロビー。初島、伊豆大島も望めます。
もともとの建物の構造的にはそこまで変わってないと思いますが、天井の見せ方などが変わるだけで、一気にモダンな雰囲気に見違えます。
快晴のこの日は心も晴れるような青。曇りの日はどんよりしますがまた違った静かな風景が広がります。いつ来ても楽しめるロビーです。
展示室へのアプローチの床
ロビーから展示室へ向かうちょっとしたスペース。展示室に入る前から、おぉ!と感じるアプローチなのです。
こちらの床は奈良の鬼師による敷瓦。盛りっとした厚みのある瓦の表情豊かな床になっていています…。
その奥にはこれまた旅館ですか?みたいな美しい扉も。
驚くべき展示室の光のコントロール
そして、一番の大興奮はここからの展示室。
おわかりいただけますでしょうか?
なんと、展示室のガラスが全く見えません…!
こちら巨大な屏風なのですが、国宝なのでちゃんとガラスケースに収まっています。ですが、素人がスマホで写真を撮ってもここまで美しくなります。
反射がないので、壁となるガラスを感じないために、「ケースにはいった美術品」としては見えなくなるんです。
そのヒミツのひとつはこちら。これまた伝統工芸の黒漆喰を用いた壁。
展示ケースの背面を黒塗りの壁にすることで、完全に反射を抑えています。
あまりに見えないので「ガラスにご注意ください」の注意書きが随所にあります。本当に気をつけないとぶつかります。逆にぶつかったであろう人の皮脂の跡が気になります 笑。
ガラスもかなり透明度が高く、光の当て方も工夫されているのだと思います。もうまるで自然光…。
人の影や照明がの光が写り込んでしまう一般の展示ケースのガラスって、意外にもかなり気が散るんですね。MOA美術館に訪れて初めて気が付きました。
美術品と同じ空気を吸っているような緊張感…
作品に触れられそうな空気感…
作品から感じられる圧がダイレクトで圧倒的なのです。
杉本氏が「至高の光り 至高の場」を空間コンセプトにしただけあり、なんというか…不思議なほどの光の美しさと。この「静」の空間がたまらないです。
この感覚は、やっぱり直接見てもらうしかないです…!
展示台へのこだわり
展示の台は、畳と行者杉を用いた「床の間」をイメージした展示台になってます。ここで畳とは!
しかも10m以上ある1枚の長い畳。
こちらの仏教美術の展示室では、樹齢1000年以上の屋久杉を台に使っています。これも10mほどはある巨大な1枚板なのです。
さらに驚きなのが…、この厚さ3.5cm程度の板のなかに免震装置が備えられているのだそう…。そんなことは微塵も感じさせない薄さと美しさです…。
カフェもミュージアムもおしゃれ
写真を撮り忘れたのですが、ここもカフェもショップもまたモダンでかっこ良いのであります。
エレベーターまでも味がある
意外と隠れた場所にあるのでもしかしたら使わない方も多いかもしれませんが、私はこのエレベーターの扉の加工が手が込んでいて結構好きでした。
なにやら味のある渋い色合いに美しい彫りが施され、静かな華やかさがあります。
抜けのないグラフィックデザイン
もう随所がデザインチックなMOA美術館。案内表示のグラフィックなども含め、そのグラフィックデザインもまた美しい。
ナンバリングデザイン
MOA美術館は展示室の佇まいも素敵…。このルームナンバーや案内の書体なども、画になるデザインになっていました。
タペストリーや、リーフレットなどの配布物のデザイン
これらもまた洗練度高し。
タイトルロゴもリーフレットもチケットも。展示物はゴリゴリの「THE・和」であり、豪華絢爛な金の茶室もある中、美術館の配布物のデザインはシンプルミニマル。
リーフレットとチケットには、銀の特色インクが使われているので、より上質な印象に仕上がってます。個人的に好きな書体が使われていて、洗練された印象があります。
見出しのシルバーの部分が特殊インクでキラッと反射します。
MOA美術館の建築の素晴らしさ
一般の美術館・博物館はどちらかというといかに保存状態を保つかに焦点がよりがちですが、MOA美術館は「いかに美しく見せるか」にも重点が置かれています。
設計に携わった杉本博司氏も美術品が大好きな方で、そうした蒐集家と呼ばれる方々は床の間に飾ったときの光の具合なんかも気にされるそうですね。それと同じで、美術品を美しく見せる自然光を人工的に再現したのがMOAの展示室。
壁に使われた伝統ある黒漆喰というチョイスは、空気の湿度を調整する働きもあり、美術品の保存という観点でもベストなのだとか。手間やお金はかかるけれど、保存にも一番良い方法なのだそうです。
まさに蒐集家であり建築もわかる人が作る美術館はこんなに素晴らしいものになるのですね。
ちなみに、個人的に今まで訪れた美術館で思い出に残る一つが、静岡県の「クレマチスの丘」にある「伊豆フォトミュージアム」。ここも展示してある写真ももちろん良いのですが、その建築デザイン自体がすばらしい。どこを写真に撮っても絵になる場所でした。
実は偶然にも、ここの内装・庭も杉本博司氏の設計だったのだとか! 納得です…。今は一時休館中みたいですが、ぜひまた行きたいなぁ。
Infotmation
MOA美術館
Address 静岡県熱海市桃山町26-2
Open 9:30〜16:30 (最終入館は16:00まで)
休館日 / 木曜日(祝休日の場合は開館)、展示替日、年末年始
観覧料 / 一般1,600円・高大生1,000円 ・シニア割引1,400円・障害者割引800円・小中生無料
≫ MOA美術館 公式サイト
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宿泊施設で美術館と提携してる場合もあるかもしれませんので、ぜひチェックしてみてください。
個人的熱海のおすすめスポットはこちらにまとめてみました!
以上、ハルモでした。