デザイナーの雑記帳

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心室中隔欠損持ちでも自宅出産はできるのか

©Alexandru Acea

何度か妊娠キロクで書いてますが、私はかねてより自宅出産がしたいと思ってました。

夫婦ふたりきりで産む完全プライベート出産ではなく、自宅出産の介助をお願いできる助産師さんを呼んでの出産。幸い、我が家に呼べる距離範囲にそうした助産師さんもいらっしゃるというのは知ってました。

ただ、ひとつ壁がありました。
それが、私が生まれつきの心臓の心室の壁に穴が空いている「心室中隔欠損症(VSD)」持ちだということ。

今日の内容は、タイトルどおり「心室中隔欠損持ちでも自宅出産はできるのか」という答えを探して紆余曲折した、長めの備忘録になります。

私が自宅出産をしたい理由

私が自宅出産を希望するきっかけになったのは、私の友人の体験談を聞いたこと。彼女は2人の子を自宅で夫婦だけで出産した経験があります。そのお話がずっと心に残っていて、いつか自分もそうするんだと漠然と考えてきました。

大きな理由としては、出産は自然の営みの一つで、病院にかかるものじゃないという考えが根底にありました。
ここで書くことは、あくまで自分だったらの話で、もちろん病院出産を選ぶ人を否定したいわけではありません。

細かい理由としてはこんな感じ。

  • 出産に医療は必要ないと感じる 
    …医療が必須だったら人類はとっくに絶滅してる
  • 医療介入が恐怖 
    …出産自体よりも会陰切開や帝王切開などが怖い
  • 歴史の浅い産科医療よりも、自宅での介助ありの出産の方が信頼感を感じる。
  • 分娩台での仰向け出産が不自然に感じてしょうがない 
    …もちろん一緒じゃないのはわかるんですけど、う○ちする時とか、力を込めたりする時、仰向けってやりやすいのだろうかという疑問
  • 陣痛の時にわざわざ病院に行くのはつらくない?
  • 自分が安心できるところで産みたい

などなど、もろもろあります。
まぁ、一般の考え方と全然違うでしょう。理解してくれる人はごくわずかです… 笑。

それでも本気でこういう考えで生きてます。

で、多くの助産師さんが掲げている自宅出産の介助の条件が、「合併症がない」こと。どうしてもコレに引っかかってしまうのが、私の生まれつきの心疾患「心室中隔欠損症」でした。

心室中隔欠損症とは

赤ちゃんがお腹の中で心臓が作られる際に、心臓の壁が閉じきらないまま産まれてくることで起きる症状で、新生児の先天性疾患では最も多く見られるものです(約20%)。

半数は、生後1年以内に穴が自然に閉鎖すると言われています。閉じないまま穴が大きい場合は、肺へ向かう血流が多く(血液短絡量が多く)なることで肺と心臓に負担がかかり、心不全(哺乳不良、息切れなど)や肺高血圧症などを引き起こすため、手術で閉じるなどの処置をします。手術の成功率も高く、多くの場合は予後は経過観察は必要かもしれませんが、普通に暮らすことができます。

私の場合は極軽度で穴が小さく(1〜2mm程度)、血液の流れも少ないため、手術をするまでもないということだったので、産まれてすぐ見つかったもののそのまま放置。
穴が小さい故に心雑音は大きいため、よく聴診器での内診で指摘されてきましたが、高校生くらいまでは年に1度、大人になってからは2,3年に一度と経過観察検査(心電図・心エコー・問診等)を受けていましたが、今まで一度もこの心疾患で支障をきたしたことはありません。

穴の位置によっては気をつけることが他にもあるかもしれませんが、私の場合、唯一大きなリスクとして気をつけなければいけないのが、傷口などから菌が入って心臓の穴に達して感染性心内膜炎などを起こすこと。

特に出血を伴う怪我や治療(歯の抜歯など)、そして出産分娩時はその危険性が高いので特に注意し、抗生剤などを使用してもらうようにと言われてきました。

その他は特に制限もなく、運動も病気も人並みに経験して過ごしてきました。

自宅出産への道 …相談のため病院を渡り歩く

初期の妊婦健診で「軽度の心室中隔欠損があります」という旨を伝えると、一旦心臓の検査を受けて現状把握をとのことで、自分で循環器科に探して検査を受けに行きました。

ここからが紆余曲折で長かった…。

循環器科医に相談してみると

東京への引っ越しで地元で通っていた病院を離れてしまったこともあり、5年ほど循環器科での検診が空いてしまっていたので、とりあえず一旦現状把握のため心電図と心エコーをしてくれる病院を探しました。

検査の結果、穴の大きさとしてはおおよそ2mm程度で血の行き来も少なく、症状のレベルとしては「軽度」。血液検査もしてもらいましたが、心臓機能も心臓の負担を示すホルモン値も全く異常ないので、今後も経過観察で問題ないといういつもどおりの結果。

「自宅出産がしたいんですけどできますか」と質問すると、「大事を取って循環器科がある総合病院産んだほうがいいんじゃないんですかねぇ…」という気のないコメント。

「うーん…」と思いつつ病院を後にしました。

循環器学会のガイドラインの存在

自分でもできる範囲でよく調べてみると、循環器学会の心疾患の妊娠出産のガイドラインというものがネットにありました。

こちらに、心疾患患者の妊娠・出産の適応、管理に関するガイドライン(2018年改訂版)というPDFがおいてあります。
心疾患患者の妊娠・出産の適応、管理に関するガイドライン(2018年改訂版)【PDF】

専門用語が完全に理解できるわけではないのですが、なんとなく聞き覚えのある単語をざっくり拾い読みしたところ…

軽度の心室中隔欠損は出産への影響は少なく、普通の妊婦と同等のリスクであり、循環器を専門とする施設でなくても管理可能 。感染性心内膜炎には抗生物質で対応可能と言える

と読み取れます。
細かいことを言うと、アメリカの指標では問題ないという判断でも、日本ではその基準は採用されてないとか…いろいろあります。

当然医者は、リスクがゼロではないから総合病院で産んだら言うと思いますけども、病状が軽度の場合は普通の妊婦さんと同レベルのリスクだったら?と、個人的には納得できませんでした。総合病院だったらどういうリスクに対応できるのか、なにを根拠に総合病院を選ぶべきなのか、もう少しつっこんで聞いたらよかったと後悔…。
これで説得できるのではともう一度いろいろあたってみました。

産科医に相談してみると

通っている産科へ検査結果を持って向かうと、この日はいつもと違う男性の先生で、心臓の検査結果を持って行くも見ないうちから「VSD(心室中隔欠損)だったらもう大きい病院で産んだ方がいいですね。」との判断。

私が「自宅出産がしたいんです。ダメならせめて助産院で…」というとぽかーんとされ、いろいろリスクを聞かされました。

VSD持ちの妊婦さんは妊娠30週から循環動態が大きく変化する可能性があり、出産時も陣痛発作時は34%増加して、総計1.5倍心臓の負担が増加するとのこと。それで急変した患者さんをよく見たとのことで、総合病院での出産を強く勧められました。
(後から考えてみると、その患者さんは心臓の穴が大きめだったんじゃないかなと思いますがね…)

どうしても納得行かず別の病院もあたる

どうしても納得行かず…、この後循環器科の先生に「問題ない」という診断書を書いてもらったり、それをもって他の産科にも相談してみましたが…やはり産科では総合病院をすすめられました。

循環器にも産科にもどちらにも聞いてみて思ったのですが、当たり前だとは思うのですが、お互いに専門分野が違うので「その科のことしかわかってないよね」という感じ。
循環器の診断結果を産科医に見せても、コピーを取るだけでわかってる感じもなかったですし…。

循環器科としては、病状のレベルとしては「特に問題はない」という判断で診断書は書けるけど、当然出産の時の妊婦の身体の変化を事細かく理解しているわけではない。
産科も心臓の細かい変化まで詳しく理解しているわけではなく、経験則で「リスクはありえる」と言うしかない(しかもVSDの妊婦なんてそう何度も何度も診るとも限らないでしょうし)。

結局、産科と循環器科と両方に精通してる人がいない限り、誰に聞いても答えは出ず、もう理解の得られる先生と出会えるかそうでないかという感じかなぁ…という所感でした。

12週までには産む場所を決めないといけないため、焦りもありました…。

葛藤

最後にもう一度いつもの産科で相談し、最終的には近くの総合病院での出産を選ぶことにしました。

まぁ、わかってはいたのですが、あまりにもいままで生きてきてなんにも支障がなかったため、普通に産めるのかもしれないという淡い期待が崩れ、理想の出産が叶わないという思いで思わず診察中に泣いてしまいました(迷惑w)。
先生も看護師さんも「その気持ちもよくわかるよ〜」となだめてくださり、優しい方たちでした…。

たった2mmの穴なのに。なんとも悔しくてやりきれず。
別に自分の身体を恨んでるとかそんなことはないのです。今までなんにもなく丈夫な身体で過ごしてきたのだと思ってたもので。一緒にしんどい登山にも行ったり、よく耐えてくれる身体だと思ってたもので。

こんなに悔しいのも異常でしょうね。というか、そういう心疾患があるのに病院という選択肢がない私も異常なんですけど 笑。

その後落ち着いてから家に帰ったら、なんだか、唐突に納得感が降りてきて。
当たり前すぎる大前提ですが、母体がどうにかなったら子は助からない。私はそこまで危険が及ぶ状態かどうかがイマイチわからないので、受け入れがたかったのでしょう。

ここからは切り替えて、どの病院を選んで産むか、そこに集中して考えようと思います。

 

結果的には…。個人的感想(2022年12月追記)

12月。出産直前に追記しています。
今まで妊婦検診と同時に、妊娠中期と後期に2回ほど総合病院の循環器科で心エコーを経過観察をして診察も受けました。
が…。最終結果としては、「普通の妊婦さんとリスクは同程度」という判断でした。

「でしょうね!」
と思いましたよ内心w
自分の身体は自分が一番よくわかる気がします。35年も寄り添ってますから。

それでも病院にかかる=リスク管理されるということで、怖いことを言われ続けます。自分の身体についてはわかるといっても、さすがにそんな専門的なことはわからないし、私も出産も初めてでしたから、今回は総合病院での出産という運びになりました。

まぁ結局は、産む本人が決めてよかったんだろうなとは思いました。

もちろん、次の出産のご縁があるとしても、今回のように全くトラブルもなく進むかといったらそうとは限りません。
同じように悩むと思います。が、まずは自宅出産で進めると思いますね…。

とにかく病院だと、コロナだなんだまだ言うかって感じだし、立ち会いも面会もないと言うし、しかもあえてそんな菌やウイルスがうじゃうじゃいるところに行かなきゃいけないのもどうかと思うし、待ち時間長いし、いちいち合意書書かされるし、わざわざ陣痛の時に病院に行くのもナンセンスだし、医療介入することで起きるリスクだってそれなりにあるし、妊娠後期に毎週診察行かされるのもほんとに面倒でキツイです。
要は自分に合ってないっていうだけなんですがね。もう愚痴しか出てこないw

とにかく今は、第一子の出産に向けて、気持ちを整えたいと思います。
ご清読ありがとうございました。