低用量ピルを6年使った体験談。メリット・デメリットについて
私ここ6年間ほど、低用量ピルにお世話になってました。今回はそのピルライフの体験談を自分なりにまとめてみます。
低用量ピルとは? 日本での普及率
正式には「経口避妊薬(oral contraceptive(OC))」という、いわゆるホルモン剤です。卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン(プロゲステロン)で構成されています。簡単に言うと、ホルモンをコントロールすることで卵巣を休めて排卵をなくし、生理の日程を調節できる薬です。
エストロゲン成分含有量が少ない低用量タイプが一般的に使われており、「低用量ピル」「ピル」という名称で呼ばれています。
※「ピル」というのは本来は丸薬という意味で、開発当初の剤形から代名詞として使われてるようです。
日本ではようやくすこーし認知され始めてきたくらいでしょうか。
排卵をなくすということで、つまりは「避妊効果がある」のですが、その部分が色濃く出てしまっていて、例えばセックスに奔放なイメージが付いてしまうんでしょうか、日本ではなんとなくあんまり周知が進まない…? という印象です。
また、不自然なコントロールをして身体は大丈夫なのかと不安になる人も多いかもしれません。
でも、ピルは生理のコントロールやPMSの解消、子宮内膜症の治療にも有効で、ポジティブな印象を持って良いお薬だと私は思ってます。自分に合いさえすれば、むしろ避妊以外のメリットの方が多かったお薬でした。
薬であるゆえに人によっては副作用などが出る場合もありますが、生理で悩んでる方の選択肢のひとつになればと思い、ここからは、自分の経験もまぜながらピルのしくみや維持費、メリットデメリットなどをお伝えしたいと思います。
【ご注意】あくまでピルを利用するにあたり私が得た知識と、個人の経験と踏まえたお話です。経験談のひとつとして受け取っていただければと思います。実際に服用を考える場合はぜひお医者様とよくご相談ください。
- 低用量ピルとは? 日本での普及率
- 低用量ピルにできること
- 低用量ピルのしくみ
- なぜ私が低用量ピルの服用をはじめたか
- 私が実際に感じた低用量ピルのメリット
- 低用量ピルのデメリット
- 低用量ピルについてのQ&A
低用量ピルにできること
低用量ピルは、毎日1錠決まった時刻に飲み続けることでホルモンの量を人工的に調節します。それによって下記の効果が得られます。
◎生理日程のコントロール
ホルモン量が調節されることで、生理不順が解消できます。また、ベースは28日周期が基本ですが、飲む日数を変えることで生理開始日を早めたり遅くしたりすることも可能です。
※ピルを服用してる時の生理のような出血は、正式には消退出血と呼ばれますが、今回はわかりやすく生理と呼びます。
◎避妊効果+卵巣の老化予防
飲んでる間は身体は妊娠してるホルモン状態に近くなることで排卵がなくなるため、飲み忘れなどがなければ99%の避妊効果があると言われています。コンドームで82%と言われていますから、より確実な方法と言えます。
また、排卵が起こらない=卵巣を休めることができるので、卵巣の老化を防止する効果もあります。
◎生理トラブルの予防
ホルモン量の変動が抑えられるので、PMS・肌荒れ・排卵痛・生理痛の軽減などの効果が期待できます。
◎婦人科系の病気の予防
子宮内膜症の予防などにも効果あるという報告があります(むしろ低用量ピルは子宮内膜症の治療の目的で処方されたりします)。身体に負担のかかる排卵をストップさせることで卵巣がんのリスクを下げたり、子宮体がんの予防効果も期待できます。
低用量ピルのしくみ
ピルの種類によってホルモン剤の構成の違いなどがありますが、今回は私が飲んでいたマーベロン28を例に説明します。
ーマーベロン | sai+ | 女性ウェルネスのためのクリニカルブランド(サイ)より画像お借りしました
マーベロン28の場合は、1周期に飲む薬28錠が、7錠ずつ4列になったシートになっています。28錠の内、3列分の21日分が実薬、最後の1列の7日分が偽薬(飲んでも飲まなくてもよいプラセボ薬)です。
実薬が終わって偽薬に入る休薬期間に入ってから約2〜3日経つと、4〜5日間ほど生理と似た出血があり、休薬期間の7日間が終わったらまた次のシートを飲みはじめる…を繰り返します。シート通りに飲むとぴったり28日周期で生理がやってくる形になります。
より詳しいしくみの解説。ホルモンのお話
女性の身体は次のようなホルモン量の変化で排卵と月経を繰り返します。
- 生理後〜排卵 …卵胞ホルモンが増えて子宮内膜を増殖させる
- 排卵後〜生理 …卵胞ホルモンと同時に黄体ホルモンが分泌され、受精卵の着床の準備
- 妊娠なしの場合 …卵胞ホルモンも黄体ホルモンも分泌されなくなり子宮内膜が剥がれ落ちて月経血となり生理開始
通常は卵胞ホルモン(エストロゲン)も黄体ホルモン(プロゲステロン)も卵巣から分泌されます。
ピルはこの2つの女性ホルモンを外から投与することで、女性ホルモンが過剰に分泌されていると脳が判断し、その結果、卵巣からのホルモン分泌を抑え、脳に「妊娠した」と認識させる効果があります。
休薬期間に入ってホルモンの濃度が下がると、3と同じ状態になり月経の開始になります。
ー“低用量ピル”で生理痛がラクになるって本当? 気になる疑問を女医が解説! | 美的.com
なぜ私が低用量ピルの服用をはじめたか
私が低用量ピルを使いはじめた理由は主に3つありました。
1. 生理のスケジュールに安心感がほしかった
個人的に一番の理由は、生理のスケジュールのコントロールでした。そこまで極端な生理不順があったわけでもなく(通常30日〜34日、異常に長くて38日の間くらいの周期)、生理がつらいわけでもなかったのですが、仕事の疲れやストレスから多少は遅れることもあり、スケジュールが生理に振り回されるのがあまり好きではありませんでした。
「この日に生理が来る」と確実にわかるということで、私としてはかなりストレスから開放されました。心の準備もできるし、うっかりナプキンを忘れるなんてことも防げました。
2. 女性主導のより確実な避妊効果がほしかった
別の理由は、女性主導の避妊がしたかったからでした。ざっくり言えば、要はコンドームでは不安だったんです 笑。
まだ20代の頃はまだ仕事をバリバリやっていた頃で「心の準備ができてない妊娠をしてしまったらどうしよう」「命に申し訳ない…」という気持ちが大きく、誰かとお付き合いをしてる時は、ただ生理が遅くなるだけでとにかく不安感が強くてそれもストレスでした。
でも日本の性教育というのは本当に遅れてて、いまや避妊方法もいろいろな種類があるのに、ほぼ男性主導のコンドームが主流になってます。
もし万が一、レイプなどの事件に巻き込まれて妊娠してしまったらどうしようなんて心配も、ピルを飲んでれば、せめてもの救いで望まない妊娠だけは防げます(アフターピルを処方してもらうという方法もありますが、まだ認知度も低く、病院に行かないと処方してもらえないですしね)。
「自分で自分の身体を守る」ということが、ピルなら叶うと思ったのです。
3. 子宮を休めたかった
当時、全然結婚の予定がなかった30代前後の身としては、卵巣を休めることができるというのはありがたいことでした。妊活をしたいと思ったときに挑戦ができるし、少しでも卵巣を若い状態で保てるのであれば、大きなメリットでした。
ほかにも、海外では使われている国も多い点などもきっかけとなり、副作用についてもいろいろ調べつつ、婦人科に相談して始めてみました。
副作用については後述しますが、私は生まれつき軽度の心疾患があったので、副作用のひとつである「血栓ができやすくなる可能性がある」というのは少し心配でした。
とりあえず1ヶ月分だけ試してみて、異常があったり体調が優れないようだったらやめようと思いましたが、はじめに処方してもらったマーベロン28で特に問題なく続けることができました。
【余談】世界のピル事情
避妊法2019 Contraceptive Use by Method 2019 によれば、世界のピルの内服率は…
フランス 33.1%
英国 26.1%
カナダ 28.5%
米国 13.7%
日本 2.9%
アメリカでは一般のドラッグストアでも購入できるのだとか。
日本を含む東アジアではピル服用率は低いですが、代わりの避妊方法としてIUD(子宮内避妊具)が普及している国も多く、日本はその中でも未だにコンドームが主流の国になっています。
私が実際に感じた低用量ピルのメリット
メリット : PMS・肌荒れ・生理痛の軽減
いわゆる生理とともに起こるこれらの不快な症状も、ピル服用中はかなり改善されていた気がします。妊活のためにピルをやめた直後はその違いをかなり実感しました。
特にPMSにいたっては、服用前は気分の落ち込みが激しすぎてかなり悩んでいました。ピルを飲むことでホルモンの状態がほぼ一定になるため、「生理のせいだなー」と思う気分の不安定さは軽減されたと感じられた日々でした。
肌荒れについてもやはり全然違って安定してました。生理前の乾燥してザラザラする期間がほぼなかったです。
生理痛については、元々生活に支障ないレベルで済んでたのであんまり参考にならないのですが、たまに生理2日目に腰がどよーーーんと重いという程度だったものが、ピル服用中は生理痛はほぼ皆無でした。
メリット : 避妊効果の安心感、卵巣を休めるメリット
コンドームのトラブルを心配するより、自分で避妊できてる安心感がありました。逆を言えば妊娠したいときにタイミングをあわせて準備ができるというのも利点です。
私は29歳頃に服用を始めたので、服用中は排卵を休めていることになるのであれば、35歳の私の卵巣は、一応今でもギリギリ20代ということになるんでしょうかね?
メリット : 生理の日程を前もって知ることができ、コントロールできる
生理の日程の調節は、予備のシートの錠剤を使って実薬を増やしたり、減らしたりすることで可能です。「旅行があるので1週間ほどのばしたいな〜」ということもできたのでとても快適でした(限度はあります)。
メリット : 月経血の量が少ない
ピルを飲むことで子宮内膜が厚くならなくなるため、必然と月経血の量が減ります。私の場合は元から量が多いタイプではなかったのですが、飲み始め当初はあまりにも量が少なく、日数もいつもより短く4日ほどで終わったのでびっくりしました。その分ナプキンの不快感も軽減されていました。
メリット : オンラインで処方が可能
当時は地元の病院で服用を開始したのですが、引っ越してから遠くなってしまいました。そこでオンライン診療で処方をしてもらえる病院を新たに探して、継続して処方してもらうことができました。
今はオンライン診療がかなり増えてるのではないでしょうか。いつもほとんど軽い問診で終わるだけですし、郵送処方してもらえるのはとてもありがたかったです。
処方してもらってはじめの頃は、半年に1度看護師さんと直接面談をして血圧などを測り、体調で異変がないかなどヒアリングがありました。
オンライン診療に移行したのは2年ほど飲み続けた後だったので、その後はオンラインでのヒアリングのみで、特にトラブルもなく続けていました。
低用量ピルのデメリット
個人的には「毎日飲むのが慣れるまで大変」という点のみで、特段デメリットはなかったのですが、利点はたくさんあるものの、人によっては副作用は心配されることのひとつです。
デメリット : 副作用が出る場合があるので注意が必要
ピルにはいくつか種類があり、ホルモンの配合量が違うものもあります。ピルが自分に合わない場合などに、以下の症状が出ることがあります。
- 吐き気
- むくみ・乳房の張り
- 頭痛・腹痛
- 血栓症
- 不正出血
- 気分の落ち込み・抑うつ症状・眠気
私も飲みはじめの頃は、すこし気分の落ち込みがあったような?という時期がありました。ピルのせいなのか単なる気落ちなのかよくわかりませんでしたが、3ヶ月〜6ヶ月で慣れた頃には全く症状はなくなり、そのまま服用を続けました。その他の症状は全くありませんでした。
合わないなと感じた場合はぜひピルの種類の変更など考えてみてください。
血栓症のリスクについて
副作用としての血栓症は、主に服用開始3ヶ月以内に発症する危険性が高いとされています。
下記にあてはまる人は血栓症のリスクが上がるとのことですので、事前に相談したり、異変を感じた場合はすぐに受診してみてください。
- 40歳以上
- 肥満
- 喫煙者
- 高血圧
- 糖尿病
- 片頭痛
- 肝臓疾患
- 産後
- 自己免疫性疾患
ここで、海外の疫学調査による参考データがあったので引用します。
女性の静脈血栓症発症のリスク
- 低用量ピル服用なし …年間1万人あたり1〜5人
- 低用量ピル服用 …年間1万人あたり3〜9人
- 妊娠中 …年間1万人あたり5〜20 人
- 分娩後12週間 …年間1万人あたり40〜65人
静脈血栓症になっても、死亡にまで至る重症例は静脈血栓症100人あたり1人で、低用量ピル使用中の死亡率は10万人あたり1人以下と報告されています。
服用なしの場合よりは、服用することで多少発症率が上がりますが、妊娠中や分娩後でもリスクはあるということで、ここは様子見しながらリスクを取ってみることに。結果的には私は特に異常なく飲み終えました。
デメリット : 飲み忘れには注意が必要
飲み忘れてしまうと避妊効果に支障をきたします。さすがに毎日決まった時刻に飲むと言っても、休薬期間の時は偽薬は使ってなかったので、アラームを入れ忘れて飲みそびれたことは何度かありました。飲み忘れて2日以上経ってしまった時があり、病院に慌てて相談したこともありましたね…。
何日飲み忘れたかによって対処法が違ったりちょっと複雑なので少し焦ります(対処例は後述します)。
デメリット : 服用をやめた後、生理・排卵が回復するのに少し時間がかかる
一般的にはピルをやめた人の約85%の人は3ヶ月ほどで通常の排卵と生理が起こると言われています。妊活を考えてピルをやめる場合は、数ヶ月はかかるという認識を持っていたほうが良さそうです。
私は妊活のためにピルを中止しようと思ってた矢先、いつもの癖でつい次のシートを飲み始めてしまい 笑、スタートが出遅れました(妊活を始めるなら一応1シート飲み終わってからと医師から指導があったので、とりあえず飲みきることに…)。
私の場合は、やめた直後1周期目の基礎体温はかなりバラバラでしたが、生理は以前と同じく30日ほどで無事に戻りました。2、3周期目は基礎体温も低温期高温期がなんとなく分かれたので、おそらく排卵もあったのではないかと思います(きちんと排卵検査などはしてないので基礎体温通りに排卵が起きていたかは不明)。その後、6周期目で無事妊娠することができました。
ピル中止後から妊娠に至るまでの経緯は、またまとめて記事にします。
デメリット : 「生理現象のコントロール」にやや不自然感がある
生理という、本来であれば自然に流れるはずである現象を人工的にコントロールするなんてなんだか不自然かもしれない…。一応自然に逆らわずに生きていたいと考える身としては、最初はちょっと抵抗感もありました。
私は生理自体に対してはむしろウエルカムというか、特段不快感があるわけではなかったのですが、スケジュールやサイクルのズレだったり、それに付随するストレスや不安感に振り回されることの方がしんどく、自分の精神のために安定感を優先した選択でした。
低用量ピルについてのQ&A
Q. 維持費はどのくらい?
A. 私は年間換算だと37,000円前後でした。1日100円ちょっとの計算ですね。
私の使っていたマーベロン28の1シートの処方は3000円ほどでした。だいたい3ヶ月〜6ヶ月おきにオンライン診療(予約料500円)を受け、3〜6シートを処方してもらってました。
日本では病気治療の目的でない低用量ピルの処方は保険適用がないというのが、ピルが浸透しない理由の一つにもなっているようですが、たしかに続けていくには少々負担が大きいかもしれません。
Q. 飲み忘れない?
A. さすがに忘れることは何度かありました 笑。
ピルを飲み忘れると、シートの何週目を飲んでるかによっては避妊効果が薄れてしまったり、3日以上忘れると生理が始まってしまったりしますので注意が必要です。
一応、飲み忘れた場合は、マーベロン28の場合は24時間以内であれば気づいた時点で服用する、24〜48時間以内であればいつもと同じ時間に、前日分の1錠と当日分の1錠を一緒に服用する、などの対応で大丈夫なこともあります。
私は一度だけ、旅行に持って行くのを忘れてしまい、2日以上間飲み忘れてしまった時がありました。その時は電話で婦人科に相談したところ「次の月経まで服用を止め、他の避妊方法を使用しながら、次の月経の初日に新しいシートを飲み始めてください」との指示をもらいました。次のシートのピルを7日間連続で飲むことで避妊効果が再開します。
飲み忘れの対応は、はじめのうちは少々複雑に感じて焦ってしまいますが、わからない場合は婦人科さんに相談したら快く対応してくれると思います。
※上記の対応はピルの種類や病院によって違う場合もありますのでぜひご確認を。
Q. どうやって生理を早めたり遅くするの?
A. 生理のスケジュールの調整は、ピルの服用をやめて休薬期間に入るか、飲み続けるかでコントロールできます。
ピルを使っていると、休薬期間に入ってから2〜4日目の間に生理が始まります。「何日目か」は個人差がある場合があります。私はだいたい決まって3日目でした。
私はなんとなく生理周期があまりにも短くなりすぎたり長くなりすぎると自分のリズムが狂う気がしてたので、長くても1週間以内の調整にしてました。
生理開始日を早める場合
生理開始日を早めたい場合は、なるべく3列目15日目分のピル以降で、生理が来てほしい日の3日前に服用をやめることで生理を早めていました。私はシートに日付を書いてしまうほうがわかりやすかったです。
生理開始日を遅くする場合
生理開始日を遅くしたい場合は、別で調整用の予備シートを新たに用意し、3列目の21日目分が終わったあとも予備シートの錠剤を飲み続け、生理が来てほしい日の3日前に服用をやめることで生理を調整しました。
Q. 飲んだか飲んでないか混乱しない?
ピルの記録とリマインドと生理の管理ができるアプリを使っていました。
「Pilll - ピルリマインダーぴるる -」をApp Storeで
アラームをセットできて、デザインもシンプルで使いやすく気に入ってました。
生理日管理アプリの「ルナルナ」にも「ピルモード」というのがありますが、私はデザインが好きでピルル派でした。
以上、私のピル体験のまとめでした。
とてつもなく長い記事になってしまいましたが、お役に立てれば幸いです。